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「アシュケナジ・プレイズ・パガニーニ」

Posted by ジュスマルダホス on 13.2010 極私的名盤   0 comments   0 trackback
ashkenasi_paganini.jpg

パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1,2番
シュムエル・アシュケナジ(vn.) ヘリベルト・エッサー指揮ウィーンso.

DG 2GMF429-524


このブログでアシュケナージのパガニーニラプソディというたいそうな名盤を扱うことになろうとは・・・一見そう見えてしまう「アシュケナジ・プレイズ・パガニーニ」という題名。たしかに私も10数年前にプレヴィン指揮のものもハイティンク指揮のものも聞いたが、今日扱うのはもちろん、それではない。シュムエル・アシュケナジという知らないヴァイオリニストが1969年に録音したパガニーニのヴァイオリン協奏曲なのである。しかも伴奏がヘリベルト・エッサー(Heribert Esser:1929-)指揮のウィーン響。ウィーン響はいいとして、エッサーって誰それ?検索しても生年しかバイオグラフィが出てこないドマイナーマエストロ。そしてこの組み合わせで録音したのが驚くことにDGなのである。夭折の天才ヴァイオリニストでもなさそうだし、かつて世界の大舞台で人気をほしいままにしていたヴァイオリニスト、というわけでもなさそうだし、録音はこれだけのようだし何もかにも分からん。メジャーレーベルの王様が隠し持つ往年の一発屋的超特大マイナー音源がどうしても気になって、早速購入してみた。

あんまり颯爽としていない序奏で、さっそくやる気をなくしかける。ウィーン響というのはいつもどことなくヘタレ感のただようオケだが、盛り上げ上手の指揮者がくるとものすごく輝きだす。例に漏れず今日もヘタレモード全開で出発。まあ、パガニーニの伴奏で盛り上がれというのも申し訳ない気もするが、エッサーさん、ほんとしっかりしてくれよ。・・・そうこうしているうちに、徐々に温度が上がって、まあそれなりの集中力を持ってきたところで、アシュケナジのヴァイオリンを待つ。

おっ、何だこれは。初めて聞くタイプの音と身振りをしたパガニーニである。

音は若干高音寄りだけども、真空管で録音したような、なんともふくよかないい音である。上がけ気味で大きめのヴィブラート(ヴィブラートは通常、その音程を中心として若干下にかけるものらしい)と、G線(一番低い音の弦)の鳴らし方が独特で、面白い。ボウイングがうまいのだろう、当たりが柔らかいのにはっきりしており、どんなに弓を当ててもガツンということがなく、速く弾ききってもかすれることがない。ちなみに、テクニックは切れ味鋭く、全く申し分ない。

それから、これだけ「退き」(弾き、ではなく)の速くて上手いパガニーニも初めて聞く。見栄を切りたくなる部分や、次に行くのに技術的に時間がかかる部分でもちょっとのタメだけですいすいと進む。しかし物足りないことは全く無く、絶妙な薄味を保ち続ける。ほとんどのヴァイオリニストがフェルマータっぽく長く伸ばす部分も、アクセントのついたスタッカートでピン!と勢いよく弾ききるのもこの人オリジナルの面白さ。ついでに言うと、どちらのカデンツァもこの人オリジナル。

初めて聞くタイプといったが、SP時代の巨匠って実はこんなんじゃなかったか。癖のある音と棘のないボウイングで、あまりタメを作らない意外に薄味な音楽作りは、ハイフェッツ以前のヴァイオリニストっぽく感じてしまう。初めてと感じたのは、それをなかなか保存状態のいいクリアなステレオ録音で聞いたからかもしれない。

エッサー率いるオケもヴァイオリンに刺激されたのか、最初とは打って変わっていい感じになっている。またそういうところがウィーン響らしくてほほえましい。ヴァイオリンとの呼吸もよくあっており、色づいていて調子がいいようだ。特に1番1楽章のカデンツァ前の盛り上げ方は、中低音に攻めさせており、なかなか興奮ものである。

いやあ、DGが見初めただけある納得の手ごたえである。アシュケナジがこれ一枚だけなのはとても惜しい。もっとチャイコフスキーとかいろいろ聞いてみたいと思った。

というか、アシュケナジの素性を確認しないと。名前でユダヤ人ということは分かるのだが・・・


Ashkenasi.jpgシュムエル・アシュケナジ(Shmuel Ashkenasi:1941-)。1941年テルアビブ生まれ。ユダヤはユダヤと分かっても、イスラエル出身、筋金入りのユダヤ人だった。カーティス音楽院でジンバリストに師事。やはり師匠もユダヤ人。1959年のエリザベートコンクールで7位、1962年のチャイコフスキーコンクールで2位ということで、キャリアは十分。ちなみにエリザベートの時の1位は同じ歳でカーティス同窓生(同門ではないが)のハイメ・ラレードで、3位がジョーゼフ・シルヴァースタイン、12位が豊田耕児であり、チャイコフスキーのときの1位はボリス・グートニコフ、3位に久保陽子が入っていた。ついでにこのときのピアノ部門第1位がジョン・オグドンと有名な方の「アシュケナージ」、ウラディーミル・アシュケナージだった。

その後イリノイ州のノーザン・イリノイ総合大学に勤務し、このパガニーニを録音した年である1969年に、大学の同僚らとフェルメール四重奏団を結成し、以来長年にわたって第1ヴァイオリニストを務めた。

!!

全然気づかなかったが、そういわれると確実に聞いたことある。私が持っているのは、チャイコフスキーのフィレンツェの思い出。確認のためにこちらも聞いてみたら、初っ端からこのパガニーニの録音と同じヴィブラートで歌いまくっている。アクセントのつけ方も全く一緒。こちらを初めて聞いたときも、独特のヴィブラートが気になって(そして気に入って)いたが、まさか同じ人とは。まさか忘れているとは。

今ではフェルメールも降板し、教授職のみらしいが、28歳のときのパガニーニの録音以降も、ちゃんと第一線で活躍していたわけである。

私の知らない一発屋ヴァイオリニストは、よく知っているメジャーカルテットのメンバーだったわけである。

Postscript:
オチのついでに言うと、誰もが知っている日本の大御所女性ヴィオリストも、1973年から78年までここのメンバーを務めていたらしい。
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