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鍵盤の女獅子 イレーナ・ヴェレッド

Posted by ジュスマルダホス on 23.2006 極私的名盤   0 comments   0 trackback
小さい頃、家にクラシックLPなどなかった頃、私は近所の人から時々LPを借りて聞いていた。その中にデッカ=ロンドンのピアノ名曲小品集だか、そのような4枚組くらいの箱物LPがあった。小学4年くらいの私にも楽しんで聞けるものだった。

そこにはリストのハンガリー狂詩曲第2番が入っていた。最初は子供でも理解できる演歌風?の鈍くさいメロディ、そして後半は子供でも楽しめるズンチャカ。しかもピアノがキラキラしていて滅法巧い。私はこの曲をたいそう気に入り、カセットテープに落としてもらってテープがワカメになるまで聞いた。

先日、イリーナ・ザリツカヤというピアニストを検索していたところ、ふとハンガリー狂詩曲を弾いていたピアニストを思い出した。「イリーナ」という響きがそのピアニストの名前に似ていたことと、ザリツカヤがソ連からイスラエルに亡命した、とのくだりからだ。確か、その人も名前がイリーナとかいう女性ピアニストで、イスラエルの人とか書いてあったような・・・早速この少ない手がかりのみで検索してみた。こういうときは本家サイトのリンク集にもある「クラシック・データ資料館」の演奏家検索だ。

「イリーナ」「ピアノ」「イスラエル」で検索をかける。
1件だけの検索結果は「イリーナ・ベルコヴィチ」。違う。
イリーナではないのかも知れない。ちょっと絞れなさそうだが、「ピアノ」「イスラエル」で検索してみよう。

49件の検索結果には、バレンボイム、ブロンフマン、ゴラン、ヨッフェなど錚々たる顔ぶれが並ぶ。マルガリートもいる。そういやこの人の録音もあの箱物LPに入っていたような気がする。あれ・・・「イスラエル」も違うのかな、と検索結果を見続けていた45番目に、その名はあった。

イレーナ・ヴェレッド。1943年生まれ。

そう、この人だ。ヴェレッド。Ilana Veredと書くらしい。イスラエル人でこの綴りなら「イラナ・ヴェレド」の方がいいのではないか・・・まだご存命のはずだ、それにしてもこの人一体今どんな活動をしているのだろうか・・・

ごちゃごちゃ考えていた間、私は無意識に検索をかけていたようだ。で、公式サイトが見つかった。

http://www.ilanavered.com/



へえ、この人がヴェレッドか。中東系の濃い目の顔立ちにボリュームたっぷりの髪。そしてトップの文言が "She is a tigress virtuosa"。

雌虎ですか(笑)、髪型だけでいわれてるんちゃうやろな・・・とか思いつつ、バイオグラフィを見てみる。すると、映像のページが勝手に開いた。映像に出てきた文字が思いっきり日本語で
「メフィスト・ワルツ第1番」(リスト)「ピアノ協奏曲第2番」(ラフマニノフ)。
おっ、来日しているのか。しかも(多分)N響との共演まで。フォントがちょっと古いから一昔前に来日したのだろう。

再生も押してないので勝手にはじまったのがメフィスト。迫力満点のバブリーなボリュームヘアーのヴェレッドさんが鍵盤に向かっている。ウヒャヒャ、こりゃ確かに雌虎かもしれん。音がバリバリ割れまくっている。うるさく、ひどい録音である。まるでミニラジオで最大音量を出しているかのような。

・・・いや、それにもまして演奏がすごい。テクニックもさることながら、猛烈なテンポと迫力でひたすら攻めまくっている。途中ナレーターの解説が入り、その後中間部、コーダを抜粋して流してあるが、最後までMAXのテンション。まるで同世代のアルゲリッチのように鍵盤につかみかかってぶっ叩きまくっている。でもアルゲリッチの軽やかさなんか微塵も見られない。アルゲリッチは鍵盤の雌豹と言われたが、ヴェレッドは虎どころかライオンの域。とにかく獰猛。たった4分くらいのビデオクリップなのに、私はぐったりした。

気を取り直したところで、ビデオクリップの下に
Live with the NHK Symphony Orchestra
の文字があるのに気づいた。なんだろうと思ってクリックすると、今度は2つのビデオクリップが見える。

また頼んでもいないのに勝手に再生される。しかも2つ同時に(泣)。一つずつみたところ、左が94年宮崎国際音楽祭のときのショパン1番、右がメフィストのときのラフ2番。

勝手に再生されて調子が狂ったのか、パソコンがフリーズ。慌ててこのページを閉じ、ディスコグラフィを見ることにした。またN響との共演ビデオが勝手に開こうとしたので、あとで見ることにして、ディスコグラフィのラインナップをみた。コンチェルトはデッカを中心にブラームス2番、ラフマニノフ2番とパガニーニ、チャイコ1番にショパン、モーツァルト21番。ベートーヴェンは全曲。王道プログラムである。早速ラフマニノフのページへ行ってみる。

やはり試聴が用意されているが、これもまた2ファイル同時に勝手に再生される。ラフマニノフ2番とパガニーニが同時再生なんて、クド過ぎる・・・

・・・しかも重い。ファイルが、ではなく演奏が、である。テンポも打鍵もずっしり重い。ラフマニノフ2番なんぞ冒頭のピアノ独奏だけでおなかいっぱいである。とはいいながらもとりあえず1楽章全部を聞いてみる。

ゴテゴテの大ロマン主義演奏だ。一昔前はそういや、これが主流だったなあ、と思い返してみる。攻めるところはガンガン攻めるが、基本的にもってりした情感たっぷりの重厚長大な演奏。古の巨匠のような疾風怒濤の激しく濃い情念ではない。緩やかに濃いのだ。

そういや、この芸風はこの世代によくみられる演奏かもしれない。エッシェンバッハ、バレンボイム、ペトロフ、クライネフ、クリダ、中村紘子。その中でもヴェレッドはダントツの濃さと重さとクドさを誇るといっても過言ではない。彼らが活躍した70年代の録音技術のせいでもあるのだろうが(多分フェイズ4録音)・・・

パガニーニラプソディがいい。同じくずっしり重い打鍵にノックアウトされそうだが、こちらでは彼女のすばやい瞬発力とそこに積極的に攻撃をしかけるノリノリのオケ(意外なことにフォンク指揮ロンドン響だそうだ)に興奮を覚えてしまった。これは古今東西のパガニーニの中でもかなり上位に入る名演なのではないか。

モーツァルトはさすがに軽やかな身のこなしであるが、お腹にずっしりくる深い打鍵がやはり彼女らしい。ショパンの小品集のページでは、今度は5つのサンプルが我先に開こうと競争していた。く、くどい・・・ガーシュウィンのページでも例によってクリックすると勝手にビデオクリップが開くのだが、
これがまた時代錯誤で笑える。


最初のメフィストでへとへとになっているはずなのに、調子に乗ってビデオもサウンドも結局全部試聴してしまった。懐かしのハンガリーはなかったが、この陽性で重く、濃くてクドい彼女のピアノを聴いているとなぜか非常に懐かしくなってしまったのだ。このバブリーなにぎやかさというか、足し算の美学というか、合成着色料というか。

彼女の演奏は、ナチュラル、ノンオイリー、デトックス、リラクゼーション、ダイエット、ヒーリングに満ち溢れた今にはない、持てる力を全開で発揮することがよしとされた20世紀末の輝かしきガンバリズムを私に呼び起こしてくれた。
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